++ 月光茶の夕べ ++

++ 月光茶の夕べ ++

大変ご無沙汰しておりました。 店主の弥光です。 皆様は喫茶店はお好きでしょうか。 ある国の深い谷底にある喫茶店。 天井は透明な布で覆われており 谷底に沿った細長い形をしています。 一人席が一列に縦に並んだその造りは 大変独特なものと言えるでしょう。 名物は『月光茶』。 このお茶しかメニューはありません。 うさぎの耳のような長いアンテナを持った からくり人形がカタカタ音を鳴らしながら 提供や片付けまで全てを黙々と行います。 月光茶は月の満欠に従って色が変わります。 紫が徐々に変化し満月の時に水色になります。 雪の朝も澄んだ夜も朝焼け夕焼けも 月光茶の注がれている月の形のティーカップが 深い谷底で光に揺れて映り煌めきます。 その喫茶店にはどうやって行きどう帰るのか 知るのは、とある体験をした人だけ。 何か思い詰めそのようにしたのでしょうが 勿論彼らもこんな場所があるとは知らず 投げた身が何故か布に受け止められたのです。 そして月光茶を出されて飲み 谷底から月明かりと満天の星を見上げます。 すると、心がスッと軽くなってきます。 苦しかった悩み事がとても小さく、 くだらないことに思えるのです。 からくりの人形のいる月光茶の店には どん底の中の優しい月の光が満ちています。 そんな月光茶の物語に惹かれて 不思議な色変わりの作品を作りました。 どうぞご覧ください。 この喫茶店を作った誰かに思いを馳せながら 今日はこれにて失礼致します。

レターの感想をリアクションで伝えよう!

石と硝子を紐で編む店

弥光商店
作品を見る